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Red Hearts 24話

第24話『そろそろ決着をつけてやるぜ』

ブルク城が魔族に襲撃されてから数十分経った事だった。
ベッドで寝ていたはずのリオナが突然、ガバッ!という音とともに勢い良く目覚めた。

「目が覚めたようですね、リオナ君」

ベッドのすぐ隣から医者がリオナへ話しかける。
寝ぼけ眼で周辺を見渡すも、その場にティニー達の姿はない。

「ここは……?俺は……」

一つ一つ何かを確認するかのように呟く。

「ここは病室です。
申し上げにくいのですが、決勝戦にてレヴィア選手に惜しくも……」

その医者の言葉で、リオナはハッと思い出した。

「あっ、そうか、俺、負けたんだっけ……」

そう言いながらも、リオナの顔は不思議と穏やかだった。

「失礼ですが、悔しくなさそうですね」

リオナのその奇妙な表情が気になった医者のその質問に、

「悔しくないって言ったら嘘になるな。
負けたんだからな……けど、久しぶりに面白い戦いが出来て嬉しかったっていう感じでもあるんだ」

彼女はグッと拳を握り締めながら答えた。

「あいつは……どこか似てる」

微笑んで一言漏らした。
彼女がレヴィアという存在を認めた、そんな瞬間でもあった。

「私もここでですが決勝戦の様子は拝見させてもらいました。
まるで踊っているかのように、いい戦いでしたよ」

「ああ……ありがとう」

医者の言葉に彼女は素直に喜ぶ。

「それで……ティニー達は?」

「君の事を心配してた人達の事ですか。
彼らは……今、理由があって外へ出てますよ」

医者のその回答に疑問を抱いた。

「理由……?
どういうことだおっさん……うっ」

立ち上がろうとしたが傷がまだ完全に塞がっていないのだろうか、リオナに少しばかりの痛みが襲った。

「まだ立ち上がらないでください。
その傷で外へ出る事など無謀でしかないですよ」

この医者の発言にリオナは少々苛立ちを覚えた。
だが医者に当たるわけにはいかない。
リオナは観念し、そのまま再度ベッドで横になる。

「それで、どんな理由なんだ?
教えてくれてもいいだろ」

若干スネているようにも見えたが医者は話しを始める。

「では、まず今外で何が起こってるかお教えしましょうか」

リオナは黙り込んだまま耳を傾ける。

「町が……魔族によって襲撃されました」

医者の言葉に彼女は目覚めたばかりだからなのか、少しきょとんとしていた。

「?町がなんだって?
今こうしてこの病院は綺麗じゃないか」

彼女の言葉に医者は淡々と答える。

「それはそうですよ、なぜならここは地下の施設ですから。
外の病院とは雰囲気が違いませんか?」

医者の言葉に、リオナは辺りを見渡す。

「……そういえばそんな気がしないでもない。
じゃあ待て、本当に魔族なのか?原因はなんだよ」

「魔族のうちの恐らくはリーダー格。
そいつの一撃で町があっという間に全壊したんです。
……私も何が起こったか分かりませんでしたが、気づいた時には同僚達や町の人達が……。
今ここにいるのは、残った市民達です。
レヴィア君がいなければ、私もあなたも、そこで仲間達と同じ運命を歩んでいたのかもしれません」

無念そうな顔で医者は今の気持ちと現状を伝えた。

その言葉に、リオナも若干の胸騒ぎを覚えていた。

「……出してくれ。
あいつらが心配だ」

彼女の不意のその言葉に、医者は少しだけ笑った。

「冗談はよしてくださいよ。
君は怪我人であり私の患者です。
無理なものは無理ですよ」

その言葉に、リオナは口をつぐむ。

「とにかく、私はこれから別の患者の治療に当たるので抜け出そうなどとは考えないでください」

そう釘を打ち、医者はそのまま彼女の部屋から去っていったのだった。





「……なーにいってやがる、黙って待ってるわけにもいかないだろ」

医者が完全にいなくなったと確信すると、彼女はしめしめと微笑む。
医者の話しなど素直に聞く耳を彼女は持ち合わせていなかった。

体中がまだ多少傷むようだったが彼女にはそんな事など気にしていられない。

「よいしょっと」

小さな掛け声を上げてベッドの下にあるリオナの靴を取り出して履く。
壁に釣り下がっているマントのように大きいコートと、立てかけてあった相棒の刀を持ち、

「こんな辛気くせえ所、いつまでもいられるわけないだろ……」

バサッ!と音を立ててコートを着るなり、医者達に気づかれないように慎重に部屋から出る。

幸い他の傷ついた患者に当たっている医師が多く、各々の患者に集中しているようなでリオナに気づく者はいなさそうだった。

「さっきからずっと胸騒ぎがして仕方ねぇ。
それに三人が心配だ、直接外に出て確かめてやるぜ」

より確かな情報を手に入れるため彼女は地上へ、そしてティニー達のもとへと歩き出す。





―それを認知していたかの如く、医者は見て見ぬふりでリオナを見送った。

「あの、彼女行ってしまいますが宜しいのでしょうか」

看護師の女が医師にそう言うと、

「いいのですよ。
彼女は止まれといって止まる素直な人ではないというのは話し方で大体わかりましたから。
無理をしなければ傷も簡単に開かないように処置はしてあるはずです。
大丈夫、彼女はあのガイ様の娘だそうですから。悪運も強そうですし、何よりも……」

医者が言いかけた言葉に、看護師の女が苦笑いしながら付け足した。

「なんとなく……でしょうか?」

「そう、なんとなく、ですよ」





場所は変わり、ゾランダドスの攻撃で壊滅した、闘技場中心部。
つまり爆心地。
この場所で、二つの影が睨み合いを始めていた。

「よぉ……よくもこんなに散らかしやがって。
村だけじゃ飽き足りず次は町か。
どこまで腐ってるんだてめえは」

ガイの、怒りを押し殺した声が響く。
その言葉にフンと鼻で笑い、

「私の目的はあくまで貴様だ。
貴様が怒れば怒る程力を発揮するのは知っている。
まあ、首輪つきの本能というやつだがな」

ガイはフゥー……と呆れたため息を漏らし、

「話になるわけねえか。
てめえはもう、人間やめてるんだったっけか。
そうなっちまったてめえはもう元に戻せねえ……最初から解ってた筈だったんだがな……村の時はそんな事も考えてた。
やっぱり……倒すしかねえってか」

ゾランダドスは笑いながら、

「クックック、そういう事だ!!」

持っている斧で勢いよく地面へ叩きつけると、その反動で上空に飛び上がりそのまま宙返り、一気にガイへと振り下ろす。

「死ねィ!!」

風を斬り振り下ろされる斧。
しかしガイはそれよりも早く反応していた。
既にゾランダドスの上空から踵落としを放っていた。

「うっぜぇんだよ、てめえは!!オラァ!!」

ガッ!!

着地と同時に後頭部へとクリーンヒットを喰らわせたかと思いきや、ゾランダドスは後頭部へ素早く腕を回し、踵落としを受け止めていた。

「クックック、やはり強いな。
触っただけで消し飛ぶ雑魚とは違うな」

ゾランダドスは彼の足を払い、ガイの腹へと拳を放つ。
彼は両手で受け止めるも、勢いを殺しきる事はできず、そのまま後方へと吹き飛ばされる。

彼のその姿に、ゾランダドスはニヤリと笑った。

「てめえとはそろそろ決着をつけてやるぜ!!」

ガイはそう言い放ち、チャキンッと刀を鞘から取り出し、構える。

「私もそのつもりだ。
このままここを貴様の墓場とし、私はこの世界で最強の王者として君臨してやろう」

斧をクルクルと手で軽々と回し、そのまま肩に背負い込むように構えると、体中から黒い炎のようなものがゆっくりと湧き出る。

そして、ガイとゾランダドスの宿命とも呼べる戦いが、今再び幕を開けたのだった。

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