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Red Hearts 7話

第7話『やらなきゃ男が廃る!』

「ゾランダドス様、人間達がどうやら今回も大会を開催するそうですが」

1人の女の声がその館内らしき場所で響き渡る。
暗闇に包まれていて、その場所が明確にできないようになっていた。

「フン、人間はつくづく愚かだな。
しかしそれが脅威でもある……か。
人間……いや、首輪付きが我々魔族に対して必死なのが見てわかる」

ゾランダドスと呼ばれた男らしき大きな影が、そう話す。

「今回も鑑賞なさいますか?
ゾランダドス様」

女の声がゾランダドスへ問うと、フンと鼻で笑うように答える。

「無論。
強い者を探すには丁度いい機会。
……いつに開催する予定だ?」

「今から1週間後以内です。
例の如く、ブルク城内闘技場で行われる模様です」

ゾランダドスの質問に答えていく女の声。
肩を揺らし笑いながら、女へと言う。

「そうか……偵察、ご苦労だったスセリ。
クク、前回も楽しませてもらったからな。
今回も楽しめる相手だといいがな」

前回もその試合について見ていたようで、その時の余韻に浸る。

「相変わらずですね、ゾランダドス様」

スセリと呼ばれた女も、ニヤリと笑みを浮かべ、頭を垂れる。

「フン、そろそろ行くとするか。
そこの人間、今回の大会も前回と同じようにするがいい。
私の与えた力、無駄にするなよ」

ゾランダドスが目を向けたその方向には、スセリとは違い、もう1人の青年の男らしき人影が頭を垂れていた。

「……ハッ、俺のためにここまでのご厚意、光栄に思います」

人間の男らしき影はそういって、ゾランダドスへ感謝の念を贈る。

「フン!
では行くとするか。
目指すはブルク城だ。
ククク……ハーッハッハッハッハッハッハ!!」

男のその言葉と響き渡る高笑いとともに、三人は溶け込むように闇に消えたのだった。
彼らの目的とは一体なんなのだろうか。
リオナ達の脅威となり得る存在なのだろうか。
動き出す陰の存在を、リオナ達は勿論知る由もなかったのだった……。





一方その頃リオナの方では、いよいよ今日から本格的な修行が始めることとなった。
既に町を出ており、現在では町の近くにあるナイア森の中を歩き進んでいる途中である。

「さ、さすがにこれだけ歩くとフラフラだよ~……」

ティニーが唸りながら、今の辛さを語る。

「我慢だティニー!
ここで耐えなきゃ漢が廃るってもんよ」

彼女がそう励まし、意地を見せるべく足を運んだ次の瞬間、ガンッと大きな木に体ごとぶつける。

「ッッッ……!いってぇー!!なんでこんなところに木が……」

「お姉ちゃん、コレよく見ると……」

「え?」

二人がその木を良く見渡してみると、それは二人よりもずっと巨大な図体でリオナ達を見下ろすようにしていた。

「しょ、食虫植物だよお姉ちゃん!
……しかも大きい!」

危険な存在であるという事は確認できたようだがその巨大な植物は次の瞬間、ガパッ!!と大きな音を立て、口らしきものをあけて、リオナへ襲い掛かる。

「ちっ、こんなところで!!」

と、リオナは刀を出そうと背中の鞘に手を伸ばそうとしたところ、触手がリオナへと襲い掛かり、抜刀を阻む。

「くそっ!早いっ!?」

咄嗟の触手による攻撃に、リオナは思わず抜刀をためらってしまった。
その素早い触手の攻撃をなんとか避けるものの、刀を抜くタイミングを掴む暇がない。
さらに、防具による重みのために体が思うように動かない。

「植物ものんびりしてるわけじゃないんだな……。
ティニー!
そっちは大丈夫か!?」

ティニーの方へ目を向けて相手に隙を与えるわけにはいかないため、声だけで応答を求める。

「はぁっ……はぁっ……お、重くて身動きが取りづらいせいか、立ち回りづらいよ……」

ティニーも、勝手が違う事に苦戦しているようだった。
防具による重力は二人に疲労としてのしかかり、徐々に体力を蝕んでいく。

「っ!しまった……!!」

触手がついに重くなってきたリオナの足を捕らえた。

強力な伸縮力で、リオナの足をグイッと引っ張ると、その力に負けたリオナはその場で仰向けになる感じで転んでしまった。

「うっ……離せよっ!」

徐々にその食虫植物のもとへ引きずり込まれるのを阻止するべく、ここでリオナの胸の紋章が光らせ、魔道で応戦する。

「燃やさせてもらうぜ!」

その威勢のある言葉もむなしく、出てきた炎はなんとほんのわずかだった。リオナの足にしっかりとからみついた触手は、リオナに何らかの毒を送りこんでいたらしく、リオナに力が入らなくなっていた。

「くっ……!?触手の毒で相手の体力を奪ってるってことかよ!?ケチくせえ野郎だぜまったく……!!」

そして徐々にその植物は二人を口元へとゆっくりと運ぶ。
しかし、リオナの心が諦めの気持ちに屈してはいなかった。

「けどここで終われっかよ……!」

一瞬、リオナの目が燃えたかのように見えたあと、リオナが渾身の力で踏ん張る。

「喰われるのだけはゴメンだぜ!うおおおりゃあああああ!!」

リオナを縛る触手からは確実に引きちぎる音がしていた。
そしてそのまま、

バシュンッ!!

彼女はまさに根性とも呼べる力で、相手の触手を引きちぎった。
そうしてスタッと地に着地する。

「はぁ……はぁ……。
みたか、植物野郎!
これで勝ったも一緒だぜ!」

胸の紋章が輝きを放つと、リオナの両手のひらに一つ一つ、炎の球体が雑ではあるが出来上がった。

「俺の炎はな、そんじょそこらのチンケな炎より熱いんだぜ?」

次の瞬間、出来上がった炎の球体をティニーを巻きつけている触手へと投げつける。
着弾した場所で爆発し触手を焼いた。
スルッと解けた触手からティニーは脱出することに成功した。

「おわっとと…。
さ、さすがお姉ちゃん!
助かったよ」

お礼を述べ、汗を拭きティニーは敵から距離を置いた。

「へっ、おとといきやがれ!」

リオナは鼻で笑いながら中指を立てて、敵へと挑発をした。

ここで敵がいる場所とは反対の木陰から一つの影が動く。

「へぇ、やるじゃないか。
相手はBランクの食人植物の魔物“カルボロニウス”なんだがな……」

彼女達に関心を抱いたようなセリフとともに、木陰から出てきたのは一人の男だった。

「あん?誰、お前?」

陰から現れたその男は、リオナの言葉にフッと、鼻で笑い、

「申し遅れた。
俺の名は“スカイ・ブロンド”。
その名の通り気ままに、空を舞う鳥のように自由に生きる男だ」

そう自己紹介し、木陰にもたれかかっていたその場所から跳び、リオナ達のいる場所に着地する。

「こいつは動きに注意さえすればなんてことはない敵だ。
君のランクではちと厳しいが、俺の力があればなんとかなるはずだ」

「なるほど、そいつぁ確かに有難てぇが……」

ティニーの方へチラッと視線を送るリオナ。
スカイはまたもフッと笑い、

「安心してくれたまえ、俺は別にそんな気を起こすつもりもない。
ただ援護するだけさ」

スカイのその言葉に、まぁいいか、と思いとりあえずこの場を乗り切るか、リオナはそうまとめた。

「そうかい。
んじゃあティニー、いくぜっ!」

「う、うん!」

リオナとティニーは一気にカルボロニウスへと詰め寄る。
襲い来る触手を見切ったのか華麗な動きで斬りさばいていく。

「やるねぇ、んじゃあそろそろ援護開始だな」

リオナやティニーが気づいてない場所から伸びてくる触手へと風の魔道で攻撃を開始するスカイ。
それのおかげもあり、スムーズに事が進む。

「てぇぇぇりゃああああ!!」

彼女は紋章を光り輝かせ、刀に炎の力を宿しカルボロニウス本体を目の前に一気に跳びあがる。

ザンッ!!

見事カルボロニウスを一刀両断したかに見えたがカルボロニウスもその場でいつまでも留まってるわけではなく、寸前で回避、損傷は軽微で済ませている。
ただ、切り口から炎があがりはじめ、敵は完全に慌てた状態になっている。
その炎に恐れをなしたのか、カルボロニウスはその場所から逃げるように去った。





「ちっ、逃がしたか。
なんにせよサンキュー助かったぜ、スカイとやら」

「お礼はいい。
無事で何よりで俺も安心しているところだしな。
それより、お礼に一つ聞いてくれるか、俺の頼みを」

続けて話していくスカイの言葉にリオナは疑問を抱く。

「頼みって……」

リオナの聞き返しに対して放った言葉はこうだった。

「道に迷った、助けてくれ」

その言葉により一瞬にして場の空気が凍りついた。

呆気に狩られたリオナとティニーはその場で凍りついたかのように言葉が思いつかなかった。

「いや、そろそろ大会が始まるだろう?
他のG-Aはもう城に一足先に行ったようだしな。
恐らくは近くの町までいかないと他のG-Aの人全然見当たらない。
このへんとなるとほんと全然いなくてね。
しかしそこで君達と出会ったわけだ!」

スカイは今までのあらすじを説明するも、2人は口を開けたまま黙りこくっていた。
しばらくし、はぁ、と状況を把握した2人は口をそろえ、

「馬鹿……だな」

「馬鹿……だね」

合致した答えを2人は吐いた。

「失礼なやつらだな、俺も迷いたくて迷ったわけじゃないぞ。
大体だな……」

スカイが言いかけたところを阻むようにリオナが、

「ま、お前みたいなやつは嫌いじゃねえ」

微笑みを浮かべながらスカイへ向けて言った。
その微笑みにスカイは少しだけ気持ちが動く。
ティニーの耳元にぼそぼそと話す。

「……君、可愛い子と旅が出来て羨ましい奴だな……」

コッソリしたその行動にムッときたリオナは、

「なにコソコソ話してんだ?」

リオナは問いかける。
彼女の方へ向き直りスカイは咳払いし、

「いやいや、何でもない。
そろそろ昼も過ぎる時間だ。
この森にいつまでもいるわけにはいかないし、そろそろ出口を目指さないか?」

はぐらかされつつも挙げる彼の提案にリオナは乗ることにした。

「まぁ、それもそうだな……暗くなる前に俺達も出ちまいたいところだ。
森のマップはさっきばあさんに貰ったやつがあるからな。
これで手軽にゴールを目指せるんだぜ。
いやー、貰っといてよかったな、ティニー」

スカイへさりげなく挑発するように言うリオナ。
ティニーは苦笑することしかできなかった。

「……あ」

その声をあげたのはティニーで、先ほどの敵達が数をなしてゾロゾロとやってきていた。

「……またか?
めんどくせえな」

リオナのその言葉とともに、ガサガサッと、ぞろぞろとカルボロニウスが湧く。
そして奥から一匹、親玉とも呼べそうな、さらに巨大な食虫植物が現れる。

「やばいな。
あの大きさ、おそらくは“ラルジ”化したカルボロニウス……。
その名も“ラルジ・カルニボロウス”だな……。
通常のカルボロニウスの倍強い。
用心して……」

スカイの話が終わる前に、リオナはズイッと前に出て、

「おらおらおら!
さっきから気持ちわりぃ触手だす植物野郎を操ってたのはお前か!
ずいぶんといやらしいことさせたもんだなぁ!?」

ゴホンゴホンと咳払いしながらスカイは、

(い、いやらしいこと……?!
そいつは一体……い、いや、その前に)

妄想を振り切り、リオナへと注意を促す。

「ちょっと君!
前に出過ぎると的にされるぞ!!」

スカイはそう言うが、ティニーは、スカイの背中をちょんちょんと突っつき、スカイにティニーへと視線を向けさせる。
そしてティニーは首を横に振り、

「スカイさん、リオナ……お姉ちゃんは戦いを前にするとすぐ燃え上がっちゃうんだよ。
それを止めるのはスカイさんにも僕にも至難の業だよ?
お姉ちゃんは敵に背を向けるくらいならなら死ぬ、でも、死ぬくらいなら前を向く勢いなんだ。
よくわかんないと思うけど……お姉ちゃんは女の人なのに、“かっこいい”んだよ。
だから僕はいつまでもお姉ちゃんを信じていけるんだ」

そう言って、スラッ、と剣を鞘から取り出しティニーは構える。

「エドさんも、こういうときは確か“やらなきゃ男が廃る!”……ですよね?
僕はそう思いますよ」

微笑みながらティニーが言ったその言葉に、スカイは少しだけ頷いていた。
スカイも、腰にある片手剣を構える。

「まあ、それもそうだな。
それじゃあ、そのお嬢様に続いて俺達も始めるとしようか!」

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