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Red Hearts 1話

第1話『俺がぶっ倒す!!』

【第1章 -出会い-】

ザッ……ザッ……ザッ……。

1歩1歩、砂を擦りながら足音を鳴らす1つの人影。

その特徴として大きく取り上げると4つ。

1つ目はワインレッドの鮮やかな髪である。
後ろ髪を結ってあり、そのポニーテールを風になびかせてゆらゆらと揺らしている。

2つめは背中に背負った刀。
鞘には幾年か使い込まれた感じが漂っており、年季を感じさせる1本のようだった。

3つ目は赤く燃える炎のような瞳の色に鋭い眼光。
しかし目の奥には澄み切った純粋さがあった。

そして4つ目の特徴は、男モノとも連想させる大きなコート。
これだけを見ても男かと思うかもしれないがその者には女独特の胸があった。

そう、女性なのである。

グ~キュルルルリルル……。

この状況で女は、だらしなく腹の虫を鳴らした。
どうやら空腹のようであり、何処か疲れた雰囲気を醸し(かもし)出している。

そこで彼女が目の前を見ると、眼前には2人組の男。
いや、魔物が堂々と女の歩行を邪魔するべく広がっているようだった。

「姉ちゃん、見てみれば人間の中では上物クラスの可愛いさじゃねえか……腹の虫でも鳴いてるようだなぁ?
俺達とくれば、一杯美味しいものとか、……それどころか、楽しい事も一杯できるぜぇ……ゲヘヘ」

2匹の魔物が、奇妙な笑い声をあげ、女を囲む。
彼女が歩み足を遂に止めた、次の瞬間だった。

「おらぁ!!」

ガスッ!

「がッ……!?」

女の足が片方の魔物の急所を思い切り蹴り上げ、問答無用の先制攻撃を放ち、そして一言放った。

「うるさいなお前ら……俺を誰だと思ってんだ?退けっ!」

鷹の如き瞳には殺意などではなく、女らしからぬ“覇気”が宿っていた。

「……人間の雌野郎が、俺達高貴の魔物にナマいってんじゃねえ!!」

悶えている相方を他所に、もう片方の魔物が彼女に強烈な拳を放つ。

が、見切ったと言わんばかりに体を回転させて攻撃を受け流し、

「だぁぁぁ!!」

その回転の反動で空中回し蹴りを一撃放ち、吹き飛ばした。
彼女の顔にはニヤリと、余裕の顔が浮き上がっていた。

「こ、この……クソ、ボスに報告だ!ヅラかるぞ!!」

「お、覚えてやがれええ~……!!」

お約束とも言えるお馴染みの台詞を残し、足早にその場を立ち去った魔物達だった。

「フッ…!雑魚……め」

雑魚の相手をしていられないリオナではあったが、既に空中回転蹴りにより、体力を使い果たしてしまったリオナ。
そのまま前のめりで倒れこんでしまった。

(あぁぁ……腹減ってもう駄目だ……俺は死ぬのか……)

そんな事を思いながら、意識はついに途絶えてしまったのだった。





……それから暫くして。

「ん……ここ……は?」

女が少しずつ目を開けると、そこは家の天井が見える。
ベッドの上で寝かされていたようだった。

右前には髪の毛が黄色の少年、左からは老人が、顔を覗きこんでいた。

「おお、気がつかれましたか……!
この辺りも大変物騒ですからな……そなたのような美人は特に狙われやすく……」

グ~キュルルルリルル……。

老人の話も途中でまたも雑音によって遮られた。
老人はニッコリと笑い、

「おお、これはこれは、運がよかったですな。
この村は、食料が豊富な村でして……今回は特別にタダでご馳走をしましょう。
この部屋を出て、右へ行ったところに“食堂”がありま……」

話の途中にも関わらず食堂という言葉一つで、匂いのする方向へとクンクンと匂いを嗅ぎながら、スタスタと歩いていったのだった。

食堂の食物が全て彼女によって荒らされるという事を勿論老人達は知る由も無かった……。





―レシア村。

この村に運ばれた少女は、村に一つある食堂にて、有り余る食欲に身を任せていた。
その食欲はまさにブラックホールのようになんでも食べつくしていて、村の人々にその片鱗を見せ付けていた。

「あ……あ……」

そして、腹八分目と成ったのか、最後のスープを飲み終わると共に、男のような口調でお礼を述べ始めるのだった。

「かぁーッ!喰った喰った!
いやあ、助かったぜ……なにせもう食べるもんがなくてさ……。
時々魔物共の食い物を盗んだりしてたんだけどよ、さすがに足らなくなってきちまって」

今までの成り行きを簡単に説明し、頭を掻きながら微笑む。
老人は彼女の成り行きを大体理解できたのか、そのまま代わりに喋る。

「そして行き倒れなさったと……幸運でしたな。
倒れてたそなたを見つけたのは、この子です。
ほら、挨拶をするんじゃよ」

そう言うなり、例の少年の背中を押して、彼女に見せる。
その少年はどこか恥かしそうにしているようだった。

「お前か、俺の命の恩人ってのは……へへっ、有難うよ!!」

「……」

彼女の微笑みも空しく、その少年からは返事が帰ってこなかった。
そして、その少年はペコリと一礼をしその場を走り去っていった。

「?なんだ?」

疑問の顔で少年の背中を見ていた。
ここで老人が、その少年について口を開いた。

「あの子は、両親を魔物に殺されてしまったんじゃ。
……それ以来、口を閉ざしてしまったんじゃ。
元気な子じゃったんじゃが……悲しい運命をあの子に背負わせて、その時はわしも神を憎んだのぅ」

虚ろみながら憎しみを噛み締めつつ、少年の過去を語ったのだった。

その老人の言った少年の過去を聞いて、リオナも同情したのか、

「そう……なのか」

彼女には曖昧な返事しか返す事が出来なかった。
魔物が蔓延る(はびこる)この時代では仕方無いのかもしれない事なのだが、やはり人々にとっては残酷な世の中でしかないのだ。

重くなった空気を紛らわすつもりだったのか、老人が新しい話しを切り出す。

「ハハッ、暗い話はここまでにしておきましょう。
わしは、このレシア村の村長を務めさせてもらっとる、“イモン”と申します。
……ところで、そなた、その”ペンダント”を持っているということは、“G-A”の方か?」

女の胸の上で光るペンダントを見ながら村長がそう聞く。

しかし女には、村長の言っている意味が理解していないようで、

「なんだ?G-…なんだって?このペンダントは、俺の親父からもらったもんだ。
ついでに、そこの刀と、このコートも」

壁に立てかけてある刀を指差しながら女はそう語った。
何処か思い入れがあるのだろうか、刀の手入れはほぼ完璧だった。

「それに、俺がこうして旅を始めたのは、“あるきっかけ”からなんだけど……。
だからG-Aだとかなんとか、全然聞いたことねえや」

あるきっかけというものが村長の中で気になった所であるが、聞くのは野暮であるだろうと思い、とりあえず伏せておいた。
G-Aの事を知らない彼女に対し、

「そうでしたか。
ならば、G-Aのこと、知っておかれるとよい。
これから旅を続けられるのならば、知っておいて損はないですからな……では、こちらへ……」

そういい、村長は外に出て行く。女も、刀を背中に背負い、老人の後を付いて行くのだった。





食堂から少し歩くと、“G-Aギルド”と書かれた看板の小屋へと辿りついた。
その小屋には一人、怪しげな老婆が水晶を見つめたまま目の前で座っていた。

「クイーア、この旅のお方に、G-Aについて教えてやってくれんか」

村長がそのクィーアという老婆に頼むと、水晶玉をじっと見ていたままだったクィーアが、女の方へ顔を向ける。

「G-A……“Guardian-Angels(守護天使)”の略じゃ。
あとはこの紙に目を通すがいい」

クイーアは簡単に説明しただけで、女へ小さな紙を渡す。
リオナはその紙を眺めながる。

「なになに……
・G-A…魔物達から市民を守るいわば“守護者”です。

・年齢は12歳から入隊が可能です。

・入隊の方には、ギルド関係者から“クリスタルペンダント”を手渡されます。

・ペンダントをギルドから貰うことで、そのペンダントに、仕事や、魔物を倒すことで手に入る、ギルド経験値を貯めておくことができます。

・このペンダントには“魔道”が施されており、倒した魔物や、こなした仕事を記憶しておくことができます。
もし仕事や倒したモンスターを忘れても、ギルド役員に見せれば判明します。

・所持者から第2者、第3者へ“譲る”場合、(本人が望まない形、奪われたなどの方法は除外します)または、本人が“死んでしまった”場合、このペンダントの経験値は消去の対象となるので注意してください。

・入隊者には、ギルド関係者から、“魔道の力”を授かることができます。
詳しくはギルド関係者までお問い合わせください。

・報酬等の話ですが、市民の悩みや、難しいものは強力な魔物の討伐まで、それらの仕事を請け負うことができます。
仕事をこなす事で、報奨金やギルド経験値が手に入ります。
但し、ランクの一致しない仕事を請け負う事は出来ません。

・SS、S、AA、A、B、C、D、Eと、ランクはあり、ランクの高い魔物の場合であるなら、ギルド経験値と序でに報奨金が貰える場合があります。
しかしながら、下位ランク、例えばEランクの方がAランクの仕事を請ける事は出来ません。
ランクに見合ったお仕事を探してください。

・最後に、G-Aは大変危険な仕事です。
ですが、それらを承諾し、前へと進む戦士は歓迎致します。

ってことか。
成る程な……なかなか洒落てるじゃねえか」

「……そなたが何者かは知らんからのぉ。
既にクリスタルペンダントは持っておるようじゃから、ちょいと、そのペンダント、見せてもらえんかのう」

クィーアがその女の胸元のクリスタルに目を付け、閲覧を要求した。

「おう!構わないぜ」

彼女は元気よく答え、そのまま首を近づけてペンダントをクイーアへ寄せる。
ペンダントを覗き込んだ時、クイーアの表情が一変した。

「むっ……!この男は……!!
そなた、このペンダントの持ち主は…」

と、言いかけたところで、

「そ、村長!クイーア殿ぉぉおお!!」

外から何やら村長とクイーアを呼ぶ声がする。
小屋の玄関には、息を切らせて入ってきた1人の村人が何か言いたげにしている。

「どうしたんじゃ!
息を切らせて……落ち着くのじゃ」

子供でも産まれたのか、そんな焦った顔をしている村の男から事情を聞くため、まずは落ち着かせようとさせた。

が、その村の男は首を振りながら、

「そ、それどころじゃないですよ!!
辻斬りですよ!
辻斬りが現れたんですよ!!」

「な、なんじゃと……!?」

村長は驚きの顔が隠せない。
同時に、絶望感が辺りを漂い始めている。
勿論、女はなんのことか分かるはずもないので、

「辻斬り?んだそりゃ」

素朴な疑問であるがクイーアへ問う。
しかしこの事態に、クイーアも少々慌て気味に、

「“辻斬りジャック”じゃ。
C級モンスターで、“片腕の剣”を使って戦うモンスター。
Eランクのそなたではとても敵う相手では……」

クイーアが話しを言い終わる前には、既に女は玄関へ歩き出していた。

「ど、何処に行くつもりじゃ!?」

クイーアの驚嘆の声にも、女はニヤリと不敵な笑みで、

「ふっ、もう決まってることじゃねえのか?
そんな輩は……この俺がぶっ倒す!!」

引きとめようとするクイーアの手も拒否し、一気に現場へと駆けつけたのだった。





村の正門で、7匹の魔物が突っ立っている。
一番前に立っている魔物こそが、片腕が剣、それこそがジャックと呼ばれる魔族だった。

大きな声で、叫びながら誰かを呼んでいるようだった。

「女はどこだあああ!女を出せ!ここに1人、刀持った女が来てるってのは、知ってんだよぉ!」

この魔物達はどうやら最初にその女によって蹴り飛ばされ、その子分の仕返しをするべくやってきたようなのだ。

「ちっ、喰らえ!」

パシュンパシュンッと、村の人が矢を放ち立ち向かった。
いつもはこの矢で襲来してくる魔物達を追っ払えているのである。

が……。

ザンッ!

村人が飛ばした矢も呆気なく、瞬く間に全て切り裂かれてしまったのだ。

「余計なことしてっと……このガキ殺すぞ?」

そういって、後に隠していた1人の少年を前方へと突き出した。
黄色の髪の毛を持った、言葉を失った少年だった。

魔物の部下に鋭い爪を首に突きつけられ、何時でも命が刈り取れる状態であるということを、村人全員に見せ付け威嚇した。

「さあ、とっとと女を出せ!!」

村人達全員が辛い選択を迫られている瞬間だった。
女を渡せば女が殺され、女を出さなければ子供が殺されるのである。
どうしようもないと、彼らは悟ってしまった。
こんな時にG-Aがいてくれたら……、そんな事を誰もが思っていた。





しかし、その時だった……!!

シュンッ!

ここで、ジャックの目の前に突然、1粒の小石が飛んできたのだ。

「…!?なにっ!?くっ!!」

何処から来たか分からない思わぬ小石での攻撃だったが、ジャックは持ち前の反射神経で避ける事が出来た。

が、その石の狙いは初めからジャックではなく、少年に爪を突きつけていた部下だった。

「いがっ……!!」

小石が頭に当たったショックと痛みで、その場で地に伏した。
チャンスの瞬間だった。
それを見計らい、少年は逃げ出す事に成功した。

「くっ、逃がすかよ!」

部下がそういって追いかけそうになったところを、ジャックが部下の肩を掴み、

「いや、いい。
あんなガキなんざ最初からどうでもいい。
それよりも……」

そう言って目の前に威風堂々と、太陽を背に立ち尽くす人影に目をやる。
そう、ジャックが探していた女が、何も言わずとも現れたのだ。

「お前、情けないやつだな。
……弱い奴に手を出して強い気になってるっとは良い度胸じゃねえのか」

挑発的に、かつ怒りの篭った一言一言に、ジャックはその圧力に少し押されていた。

「てめえ……部下が言ってた女か?
名を言え!」

と、片腕の剣で指さしながら聞いた。

「名前だと?いいぜ!
教えてやるから、その獣くせえ臭いのついた耳かっぽじって、よ~く聞くがいいさ!」

そう言い放つと、人差し指を天へ向け、あたかも彼女自身の体が光っているのではないのかと言った感じに太陽の光を味方にした。

「燃え滾る、獅子の鼓動をこの胸に、熱き力は漢の魂!」

「明日へ向かって意地で進むぜ漢道!」

「“リオナ・レッドハート”!!ここに見参!!」

背中の刀を取り出し、そのまま矛先をジャック達へ向けそして今彼女の口上が決まった瞬間だった。

「これ以上の勝手はお天道様が許しても、この俺が許さねえぜ!!」

それを遠くから見ていた黄色の髪の少年が、目を光らせた瞬間だった。
自分の周りには居なかった初めての存在に、驚きと同時に憧れが生まれた。

「……女なのに、男か?」

ジャックが素朴な事を聞くと、リオナは怒った口調で、

「女だけど男じゃねえって!漢だ!」

怒鳴り声を上げ、ジャックを叱り付ける。
ジャックも、初めての相手に腹の虫が騒いでいた。
勿論今回の場合は怒りが篭っている。

「クッ……ふざけたやつだ……!
野郎ども、かかれ!!」

ジャックが焦りながらも指示を出す。
後にいた残り5体がリオナへ襲い掛かる。
誰がどう見ても多勢に無勢で勝てるわけがない、村人はそう思っていたがリオナはそうではない。

「……雑魚ばっか並べて、俺の相手になると思うなよ!!」

刀を横に構え足腰を踏ん張んばると、次の瞬間に、

チャキーンッ!!

「ぐああ……こいつ、強い……?!」

一瞬のうちに、5体もの魔物を全て凪ぎ倒してしまった。
その様はまるで居合い抜きのようだった。
彼女の言葉通り、5体全員相手にならずに終る。

「く、くそったれ……!!
おらああああああああ!!」

ここでジャックが、少々投槍だったがリオナへと突っ込んだ。
が、リオナはジャックの剣による攻撃も受け止めた。

「親玉さんよ!
少しは力持ってるみたいだけどよ、やっぱり俺には勝てねえなあ」

ガキィィンッ!

激しい金属音を立ててお互い距離を離したかと思いきや、リオナは一気にジャックの懐へ詰め寄り、そして……。

「終りだぁ!」

その一言と共に快音を鳴らし、ジャックの身体は真っ二つに分断されていた。

「な、何故だ、何故負けたんだ、この俺がお前みたいな女に……!」

地面へとその体が溶けていくジャックを見下ろし、リオナは一言。

「なぜなら、お前には、漢気がねえからだ」

そういって、リオナは持っていた刀を鞘へ納めたのだった。

ジャックは、彼女の解答に対して納得の行かない顔のままだった。
しかし声も出す事も敵わぬ程溶けていたジャックはどうしようもなかったため、そのまま消えていったのだった。

「おお……」

村長の感嘆の言葉だった。
そう、リオナの活躍に、村中の人々は完全に驚きっ放しだった。





そうして事が済み、改めて決心した事をクイーアに伝える。

「というわけでギルドへ入隊するぜ、婆さん」

リオナがクイーアの下へ近寄り、入隊希望を出したリオナ。
彼女の実力ならばなんとかなるかもしれないと、薄々そんな事を思っていたクイーアは、

「わかった。
ではついてこい」

リオナを引きつれ、再度ギルドへ向かい、申請を行う事となったのだ。





申請な手続きを済ませるため、リオナへと申請用紙を渡し、記入させる。
ある程度は教養を受けていたようで、それをスラスラと書き進めるリオナ。

そして、リオナのペンダントを見つめ、

「ギルド入会者には、……と、ペンダントは持っておるな。
次に、“火、水、土、風”のうち、一つを選ぶがよい。
入会者には、この“紋章スタンプ”を押す事によって、魔道という力を授けるようにしておる。
何をやっても消えることは無いから安心せい。
これからの旅は、恐らくは厳しいモノになりそうじゃからな……」

少し脅しているかのようだったがリオナはそんな事など気にしない。
彼女は深く考え込まず即答で、

「漢の太陽、もちろん“火”!!
ココに頼むぜ」

ビシッと、リオナはちょうど胸元らへんを人差し指で差しながら示す。
クイーアは、それに対しコクリと頷く。

「では、体をこっちに。
……火傷したみたいに痛いが、我慢することじゃのう」

クイーアが自らの方向へ体を寄せるように手招きする。
リオナは、不敵な笑みで、

「へっ、なめんじゃねえぜ……これくらいどってこと……」

ジュッ……。

話しの途中に、無情にも胸元に押し付けられた紋章。
リオナはとって、完全に心の準備が出来ていなかった状態だった。

「おわっちちちちち!!!」

胸元にはしっかりと、“火”のような形をした刻印が浮かび上がってきた。

「さあ、できたぞい。
ついでに、クリスタルも見せい。
ギルド経験値を知りたいからな……。
お主の強さは絶対にEランクではないはずじゃ」

そう言われ、リオナは、再度クイーアへ渋々ペンダントを向ける。

クイーアは、ペンダントをじっと見つめると表情を変え、

「……やっぱりか、既にCランク。
ギルド入る前から、既に何度か戦ったことがあるんじゃな。
全く、強いわけじゃ!ハーッハッハッハ!
それに……そなた、姪は“レッドハート”と言ったか。
おぬしの親父は、わしもよく知っておる。
偉大な父を持ったのう……」

クイーアが笑いながらリオナの父の事を褒めた。
リオナはクイーアが父を知っている、という事に素早い反応をした。

「お、親父を知ってんのか?」

荒っぽいが胸倉をつかんでそう聞くと、クイーアは両手でリオナを押さえ込むかのように、

「まあまあ、慌てるでない。
……確かにヤツはここへ来て、そしてこの村をすぐに去った事があった。
こんな事を言ってたかのぉ。
“俺の娘に会ったら、宜しく頼む”とだけ言ってな……。
全く、親子揃って馬鹿ばっかだなお主達は」

茶化しながら、クイーアはリオナの父親の言っていた伝言をしっかりと伝えた。

「フ、フフ……待ってろよ、バカ親父……!」

最早彼女の中から湧き上がる気持ちは止める事は出来そうにない。
颯爽とギルドから、出ようとしたリオナに、

「お主、行くんじゃな?
……これから前途多難なことがあっても……」

クイーアがそう忠告を言いかけたところで、リオナは、

「へっ、おいおい、俺は泣く魔物はもっと泣かすリオナ・レッドハートだぜ?
なめんなよ!」

焦る気持ちを勇気に変えて、彼女はギルドから出て行ったのだった。





「やはり……旅立たれますか、リオナさん」

村長が寂しげだったがそういうと、

「おう!漢の旅に、終わりは無いからな!」

リオナは村長に対して自信ありげにそう語った。

ここで、先程襲われていた黄色の髪の少年が、リオナの前に走って来た。
リオナに頭をペコリと下げるなり、

「……あの、僕をお供にさせてください」

と言って近寄った。
なんとティニーが喋っている。その事実に驚かざるを得なかった村長。

「ティニー!喋れるように……いや、それよりもお主……」

呼び止めようとした所、リオナがティニーの首からぶら下がる光り輝くペンダントを見るなり、

「へぇ、村長さんよ、こいつも立派な勇気持ってるみたいだぜ?
……ほら、こいつが証拠だぜ」

村長へと少年の胸元を見せ付けると、立派な“火”の刻印がしっかりと印されていた。

「ティニーつったっけ?
へっ、やるじゃねえか。俺はお前を気に入ったぜ!
村長!俺はこいつを連れて行くことにするけど、あんたはどうなんだ?」

リオナが微笑み顔でそう尋ねると、村長は、仕方のない顔をし、

「……分かった。
ティニー、お主の意思は受け取ったよ。
……これを持って行くがいい」

村長が何かを投げ、それをティニーが受け取った。
重かったがそれでも扱うには十分申し分の無い、まさに剣だった。

「……これは……?」

「それはお主の父の形見だよ。
……しっかりやっていきなさい、ティニー。
リオナさんの言う事を聞くんだよ」

村長の顔が少し重い表情だった。
寂しい所もあるのかもしれないが、それでもティニーがいつか旅立つ事は村長も分かっていた。
だからこそ、そして村人全員が、2人を見送ったのだった。

「……っしゃあ!!準備は整ったぜ!!
……行こうぜ相棒、俺達の、漢の旅をな!!」

リオナはそういって、2人は、レシア村を後にしたのだった。
村人達の声援に後押しされながら、彼女らの“漢の旅”は始まったのだった。

【第1章 -出会い- 終】

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RHは現在もガンガン進行中!(?)長期休載とかなるべくしないように頑張るぜ!!

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