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Red Hearts 15話

第15話『あっ!後ろ!』

≪第1回戦も終わり、続いて第2回戦へと進もうとしています!1回戦目から白熱した戦いが繰り広げられたわけなのですが、これからの戦いに期待を持っているのは私だけではないのでしょうか!間違いなく、今大会は、更なる熱い試合が期待できそうです!!!!≫

バァーン!と、アナウンサーが立ち上がり、机に足を乗っけて熱く語ると、彼の後ろ両サイドから爆発が起こった。その爆発からは、なんとピンクの紙が舞い、まさに桜吹雪といったところだった。

≪さあ、第2回戦、第1試合は、今大会、初の出場であり、若き獅子、これからに期待を持ってもよろしいのでしょうか!その名も・・・≫

左腕を伸ばし、出てくる一人の少年を指しながら、高らかに、

≪ティニーーーー・ブレイブス選手ッ!!!≫

観客達に見守られ、出場するティニー。


後に続き、先ほどリオナと言い争っていた少女。優雅に前進する。

≪そして対するは、Cランクきっての美女というに相応しい!そう、彼女は貴族であり、G-Aでもあるのです!その可憐な容姿で魅了し、モンスターを駆逐してきたといいます!その名も、フェレト・レッジイイイイイイイイイイイイナ!!!≫

フェレトは、手を観客に振り、はしゃぐことなく、一片も揺るがない余裕の表情で、まさにお嬢様と言ったところだった。

「ちょっと、お嬢様と言ったではなく、実際にお嬢様なのよ!」

はたからみたら一人事をぶつぶついっているように、ナレーションへ切り返す。

「え、えっと、お手柔らかに・・・」

緊張の顔を浮かべながらも微笑みを繕い、反応を求めるティニーだったが、バッサリ切り捨てるかのように、

「・・先ほども申しましたように、私は強い人以外興味はないんですのよ。手柔らかに行く予定など毛頭ございませんわ。悪いけど、あなたにはここで終ってもらいますわ」

悪魔のような笑みを浮かべ、そのままフィールドの定位置に着く。

≪それでは第2回戦第1試合、ティニー選手VSフェレト選手、この勝負の行方はどうなるのか!それでは!!レディー・・・≫

ティニーが合図とともに、剣を構える。フェレトの方はというと、何も構える気もないように、まるで呆然と突っ立つ樹木のように、ただただ、立っていた。

≪ゴーーーーーーーッ!!≫

カァンッ!と、ゴングがなると、ティニーが真っ先に彼女の方へと走る。

(なんだろう、真っ先に足が出たのはいいけど、なんだか危ない気がする・・・・)

心に何か彼女に対する不安感を抱きながらも、牽制する。

「たぁーっ!」

ガキッ・・・という、金属音ではない、違う何か石を叩いたような音がすると、突然フェレトが砕けちった。



――と、思いきや、

「・・・・!?い、石だったの?!」

呆気に取られているティニーをよそに、彼の後ろには、当の本人フェレトの姿があった。

「あらあら、なにやってるんですの?石なんか叩いてしまって。そんなに石が好きなのかしら?おーっほっほ!」

とんでもないスピード、とかそういうのではない。冷や汗を垂らすティニーへと、フェレトがついに仕掛ける。

「・・・そちらが先に手を出したということで、私もやらせていただきますわ。・・・それ」

次の瞬間、とんでもない跳躍力で、ティニーのところへまさに瞬間移動に近い速さで迫る。

「は、はやっ・・」

瞬間移動に近い拳による攻撃をなんとか視ることができたおかげで、彼女のファーストアタックをスレスレで回避することができた。シュン、という風斬り音が今頃遅れてやってきた。

――そう、彼女の戦闘スタイルは、剣でも斧でもなく、”己”という武器だった。

「・・・あら。よく避けましたわね」

少しだけ眉を引き付かせ、焦燥感をただよわせていた。

「まあでも、これはどうかしら?」

二人の位置はまさに至近距離、剣を振ろうにも直撃を与えられない位置。・・・彼女にとっては好都合の位置。

「吹き飛びなさい・・しつこいから!」

至近距離からの彼女の素早い攻撃は、避けられるはずもなく、ティニーの腹部に拳が直撃する。

「かはっ・・・!」

上空へかち上げられ、そのまま力なく地面へと落下した。

「ティ、ティニー君!!」

応援していたリィナ達も、さすがに血の気が引いた。が、リオナだけはそんな顔をしていなかった。

「大丈夫だ」

そう一言だけ言うと、まさにその通りなのか、フェレトは満足そうな顔をしていなかった。

「・・・これだけ至近距離で、私の攻撃を避けるなんてね。避けるっていっても、直撃を避けたってことだけど・・・喰らった事にはかわりはありませんわ」

言葉通りだった。完全に避けきる事ができなかったのか、腹部を押さえ、咳き込みながら立ち上がるティニー、これにはアナウンサー、観客ともども動揺を隠せない。

≪ティニー選手、至近距離からのボディブローを喰らってしまったにも関わらず、なんと立ち上がりました!なんという根性、精神!アナウンサーである私も見習うべきところなんでしょう!これからどうなっていくのか、我々はただただ見守るばかりです・・≫


「・・・さて、どうするのかしら?あの一撃で、私に敵わないってことが、お分かりになって?あなたと長い事遊んでいるわけには参りませんので・・・これにて決着させてもらいますわ!」

拳を天の方へ翳す(かざす)と、次の瞬間、拳を地面に叩き付けた。この時、どうやら魔道を使用していたらしく、右腕が土色に光り輝いたのが一瞬だけ見えた。そして、拳を叩き付けた場所から、地響きが起こると、そのまま地面を揺らし、ティニーの足をぐら付かせる。

≪おおおおお!?!?これは地震です!フェレト選手、地震を起こしティニー選手の足を奪うようです!!ティニー選手、どう対応するのでしょうか、このままでは絶望的です!!≫

アナウンサーの熱苦しい実況の通り、このままいけばフェレトに吹っ飛ばされてノックアウトが目に見えている。

「なんとか・・・しないとっ・・・!」

とは言ってみたものの、目の前からは超高速でフェレトが迫ってきている。

「なんとかなるのならば今頃どうにかなっていますわ!!」

勝利の笑みを浮かべたまま、拳をかざし、いざ栄冠を手にしよう、といったところで、ティニーが思わぬ手に出た―。





「あっ!後ろ!」

と言うと、その言葉にすかさずフェレトが反応した。

「えっ!?」

今更の古いギャグに引っかかってしまったのが運の尽き。今までお嬢様でいたためにそういったギャグのセンスは身についてなかったのだろうか。ティニーを前に、つい後ろを振り向いてしまった。

「え?!あら?な、なにもない・・・あ」

彼女が向き直ると、いつのまにかティニーを逃がしてしまっていた。不覚だった。

「こんな手、今更通じるとも思わなかったよ・・・ごめんね、ジョークだよ」




――場が完全に静寂していた。まさかこんなジョークに今更引っかかるとは誰も思いもしない。この静寂に、フェレトは動揺しながら、

「べ、別に!ちょっと引っかかってあげただけですわ!!かか、彼にチャンスををを・・・・っその・・・!」

フェレトは、頬を赤らめ、恥かしさを前面に出していた。

「ぷっくくくく・・・!」

リオナの方はというと、観客席から笑いを堪え(こらえ)ていたのだった。



「・・・もう許せませんわ・・この屈辱、倍にして返してさしあげますわ・・・!」

さすがにここまでの侮辱を受けてしまったフェレトにはもはや我慢ならない失態だった。普通なら許すはずもない。

「あ、あはは・・・これはちょっとヤバいかも・・・」

今までよりも更に彼女が激化するとなると冷や冷やする。

(とはいっても、なんとか彼女の平常心を崩す事ができたかな・・・これで少しは単純化されればいいけどそうもいかないかな・・・!)

剣を構え直し、フェレトへと視線を向ける。

「・・・終わらさせていただきますわ。ええそうよ、これで終わりなのですわ!!!」

右手の紋章が光り、地面が突然、抉られた(えぐられた)かのように消失し、彼女の前髪が宙を舞うと、彼女の両拳に派手な装飾が、いや、装甲が装着された。色や形が鮮やかだが物質そのものの材質は恐らく石や土と考えていいだろう。ここから彼女は恐らくティニーに対して本気でかかるだろう。屈辱を倍にして返すために――。

「さあ・・・終了なさいな!!」

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