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Red Hearts 11話

第11話『こんなの夢なんだって・・・』

「聞いて欲しいことが・・・あるんです」

少女の言葉に耳を傾けるレヴィア。

「聞いて欲しいことですか・・?」

疑問を持った顔で聞くと、少女は頷き、

「その・・・とりあえずはここで話すのも・・・ですから、道中で聞いてくださいますか・・?」

その問に、レヴィアはメガネを上げながら、

「はい、かまいませんよ」

と答えたのだった。とりあえずは気になる事であるに違いないし、大会までには時間もあった。彼女の言うことを聞いていてもロスにはならない、そう考え、レヴィアは付き合うことにした。



「あなたのお母さんが不治の病に・・?」

驚きを隠せないようで、常に冷静なレヴィアの顔にも戸惑いがあった。

「・・・はい、なんとかお母さんを養っていくために、私はこうしてお仕事してたんです・・・それで、状態を維持するために薬草が必要なんです・・でも私の体力じゃ到底怪物さんには敵いっこないの・・」

顔を空に上げ、少し悲しそうな顔で、

「ギルドにもなんとかお話したんですけど・・・お金がやっぱり足りなくって、それで・・・」

両人指し指をツンツンと、突っつきあいながら少女は現状を語った。

「・・・それで今回は私に請け負ってもらおう、そういうことでしょうか」

レヴィアは少女の心を悟ったのか、少女の言いたいことを先に言うと、

「・・やっぱり、ダメですよ・・ね、お金も払えないのに、タダで請け負ってもらおうなんて、図々しかったですよね・・・」

俯き気味に顔を下に向け、気を落とす。

「えと・・・でも助けてもらったお礼はしたいので、お仕事の話は聞かなかったことにして、お家まできてください」

しかしなんとか精一杯な笑顔を作って、レヴィアに、健気な少女はそう言った。このとき、レヴィアの心には何か、わだかまりができたような、そんな気がしてならなかった―。



少女の家にたどり着くなり、少女はトビラを開け、

「ただいま、お母さん!」

一目散に彼女は母親の下へと走る。

「ねえ、お母さん、今日はちょっと悪い人に襲われちゃったの。でも、この人がね・・・」

少女は今日のお土産話を母親にたくさんとしていた。

ベッドに横たわったまま、目を瞑ったまま、反応もないままの母親に・・・・。

レヴィアは医療の本も多少はかじったこともあり、この母親の病状は見てわかった。

「この病気は・・・『ストッピング』・・・」

ストッピングとは名前の通り、何もかもがストップしたように、時が止まったかのようになってしまう症状で、ハッキリと言ってしまうのならば植物状態に近い。確かに不治の病であると同時に難病であることに間違いはなかった。時が止まってしまっているために器官などももちろん働いていない・・・。


下手すれば―


「G-Aさん、お母さんが死んだなんて、私絶対思ってないよ・・・?」

ハッと気づくと、少女は俯いたまま、声を震わせてレヴィアへと心境を語る。子を想う親があるように、親を想う子供。形は多少違えど趣旨は同じ。誰でも身内が死ぬことは望みたくない。死ぬことは・・・。

「お医者さんも、この病気は難しい病気だって、下手すればって、そういってたの。でも私はそんなこと信じたくないの・・この前まで元気だったお母さんを思い出すと、こんなの夢なんだって・・・信じたく・・・ないよぉ・・・」

ガタンッ・・・と、膝を落とした少女。レヴィアの心にも大きく揺らぐものがあった。

「夢・・・」

脳裏に焼きつく言葉、『こんなの夢なんだって・・・』

自分は・・?どうしてG-Aになったの?

ドクンッ・・・

大人になりたいから?

ドクンッ・・・・・・

違う、こんなのはただの現実逃避・・

ドクンッ・・・

・・・夢じゃ・・・


「あの・・・どうしたんですか?」

少女の言葉に我に帰るレヴィア。

(・・・考えすぎ・・・ですか)

「・・・いえ」

一言で返すレヴィアだったが、少女は心配そうに、

「顔色・・・悪そうですけど、あの・・・」

とレヴィアへと気遣う。

「ごめんなさい。気遣いさせてしまって・・・私なら大丈夫ですよ」

ニコッと、笑顔で返すレヴィア。なんとか安心したのか、少女は、

「そうですか、よかったぁ・・えっと、よかったらお食事、ご馳走になってください!質素なものしか出せないですけど・・・」

さすがにレヴィアは、世話になるわけにはいかないと、

「あ、いえ、私はいいですよ、あなたが食べてください」

そう切り返すも、

「いいんですよ?それに、お食事は一人じゃつまんないですから・・・」

再度、一瞬だけ俯いた。なんとか出来ないかと、レヴィアの考え付いた言葉が、

「それなら、私もお手伝いしてもいいでしょうか?」

だった。少女は嬉しそうに両手を合わせ、

「あはっ、それならお願いします!もっとお話したいです!」

なんとも、立ち直りの早い少女だった。すぐに二人はキッチンへ向かい、支度を始めた。

「そういえば、名前、聞いてませんでしたね」

レヴィアがジャガイモの皮を剥きながら言うと、少女はニコッとレヴィアの方へ振り向き、

「あ、はい、私、『マリア・スレイ』っていいます。えっと、G-Aさんの名前は・・・?」

その問に対し、レヴィアは微笑を浮かべながら、

「レヴィア・レイジです。でもG-Aは大抵根無し草ですから、次いつ会えるかわかりませんし、覚えなくても結構ですよ」

そう答える。戸惑いを浮かべながらもマリアは、

「そ、そうですか・・?」

「そうですよ」

「そうなんですか」

「ええ、そうなんです」

このやりとりに、マリアは笑いをこぼし始める。それはレヴィアも一緒だった。

しばらくし、ようやく夕飯の支度が終わり、出来た食事を先ほどの母親の部屋に持っていくと、

「お母さん、ごはんできたからね。レヴィアさんと一緒に作ったんだよ。おいしそうでしょ?ふふっ」

外面は嬉しそうだが彼女からはひしひしと、悲しさと辛さが伝わってきていた。

「いただきまーす」

マリアの合掌とあわせて、レヴィアも、

「いただきます」

二人の楽しそうな夕食風景が広がったのは言うまでもない。レヴィアは、自分の傷む心を押し殺しながら―。


レヴィアも、まだ大会には時間もあるし距離も近い、ということで、とりあえずはマリアの家に泊まっていく事になった。マリアはやはり今まで一人で暮らしてきたようなものなので、寂しさが積もり積もっていたのか、レヴィアといることが、他人と話せることが本当に嬉しそうだった。



日は沈み、月明かりが照らす夜となり、とりあえずはベッドを借りたレヴィアは、今日の疲れを癒すために、就寝しようとした、そのときだった。レヴィアの部屋の扉が開き、

「ご、ごめんなさい。ノックも無しに・・その・・・・・えと・・・・」

何か言いたげなマリアの行動は既に読めていた。

「・・・やっぱり寂しいのでしょうか?」

先にそういうと、マリアは、顔を俯かせ、

「ごめんなさい、本当にわがままで・・・でも、久々にお話できる人とこうして長くいたのも久しぶりだから・・・その・・・一緒に寝させてもらってもいいですか・・?」

無理を承知で頼むマリアの問に、レヴィアは迷うことなく、

「ええ、いいですよ。私も実は長らく人と接することが少なかったものですから、あなたの気持ち、少しだけわかる気がします」

そういって、ススッとベッドの奥へ体を寄せ、もう一人分のスペースを空けた。

「ほ、ほんとうにごめんなさい・・・その・・・失礼します」

ゴソゴソと、マリアがベッドへと入り込む。しかし無理もないだろう。母親があの状態であれば、人が恋しくなるのも仕方がないこと。やはり本当に嬉しかったのだろうか。すると、突然なにやらその彼女の方から、何やらグスッ、グスッと音が聞こえた。

「・・・・ふっ・・・うっ・・・」

月明かりに照らされているために、彼女の状況がわかった。マリアは今泣いていた。その状況を見てレヴィアはマリアの方を向いて、そのまま抱きしめ、頭を撫でた。

「・・・辛かったんでしょう。今は・・・私の胸の中で泣いてください・・・」

そういって更に抱き寄せると、彼女は箍(たが)が外れたのか、その場で大泣きを始めてしまった。

「うぇぇぇん・・・おかあさぁぁん・・・・!」

よっぽど溜め込んでいたのか、マリアからもレヴィアを強く抱きしめていた。彼女の締める強さの痛みを、心でも痛いほどに感じ取ったレヴィアだった―。

壮絶に繰り広げられると予想される大会の予感を前に、レヴィアに、残された時間は・・・


あと3日――。

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