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Red Hearts 28話

第28話『やるに決まってんだろ?』

「久しぶりね、レヴィア」

やってきた二つの人影。

「久方ぶりでござるな」

髪の長い女性と、熊のように大きい男性の二人が、レヴィアへと話しかけた。

「……ジンさん、ネフリータさん、お久しぶりです」

レヴィアは頭を下げて挨拶した。

「あん?知り合いかレヴィア」

レヴィアの背後から質問するリオナにレヴィアは向きを変え、

「知らないのですか?
こちらの大剣を背負っているお方はジン・ガイバさん、こちらの無武装なお方はネフリータ・レジーナさんです。
どちらの方もSランクの強豪ですよ」

レヴィアの回答に、驚くリオナ。
そのリオナを見て、ジンはレヴィアの頭に手を置いて、

「おお、そちらの方はまさか噂のガイ殿の娘、リオナ殿でござるな。
成る程、ガイに似ていい面構えでござるな」

リオナの顔をまじまじと見ながら言うジン。

「しかし……少々迷いがあるようでござるな……」

ジンの迷いという言葉に、リオナは何も言い返せないままでいた。

「その迷いが何なのかについては、お主が解決する部分でござろう。
ガイの娘となれば、大丈夫、お主ならできるでござるよ」

ジンはリオナに見た心の奥の真の強さを信じ、励ましの言葉を贈るのだった。

「……それでレヴィア、あなたもしかして、イクスの事を探してるんじゃなくって?」

話を切り替えるネフリータの言葉にレヴィアはハッとした。

そう、ゾランダドス、スセリは確認したがイクスだけは見ていない。
この混乱に乗じて来る筈の人物がいないのである。

「イ、イクスはどこへ?!」

彼女の質問に、ネフリータは悪戯をしたような笑い方で、

「あら?その子なら、娘にまかせたわ。
あともう一人、強そうな子がいたからその子達にまかせておいたわ。
あたくし達はあなた達とは逆の西地区の残党処理をしてた所ですわ」

レヴィアは彼女の言葉から場所を推測し、

「……わかりました。
有難うございました、それでは」

言葉少なめに、レヴィアはイクスがいると思われる場所へ走り去っていった。

「あいつも忙しい奴だな……どれ、俺も行ってみっかな?」

リオナはレヴィアが走っていった方向へ向き、

「おうティニー、リィナとエレにはレヴィアんとこいったって言っておいてくれ」

ティニーに簡単に伝えると、

「え?あ、うん、わかったよお姉ちゃん、気をつけてね」

彼の返事を聞き終わるなりレヴィアが向かった方向へ彼女は走っていった。

「……クス、まああらかた終わってるんじゃないかしらね。
イクス相手だろうと、あたくしの娘には敵いっこないもの。フフフ……」

不敵な笑みで、ネフリータの表情からは娘の勝利を信じきった感じが見受けられた。

「相変わらず、ガイと同じで親馬鹿でござるな……」

ジンの呆れ返った顔に向かってネフリータは、

「あら、可愛い娘のためでしたら馬鹿にでもなんにでもなりますわよ?
クスクス」

悪戯のような笑い顔で、ネフリータは語った。

ジンはそれ以上言葉にせず、黙り込んだままとなった―。





暫く走るレヴィアとリオナ。
そしてその先に居た者とは……。

「あら……、援軍かしら?
悪いけど……もう敵さんは帰っちゃったわよ?
一緒に戦ってた子は深追いしちゃったけれど」

そこに立ち尽くすのは、ティニーを打ち負かせた、フェレト・レジーナの姿だった。

「お母様直伝のインパクトブリッドを装着したのにここまでの実力って、何者なのかしら……」

ブツブツと独り言を呟くフェレト。
レヴィアは、

「フェレトさん、今ここで誰と戦ってましたか?
例えば大剣を持った人など」

その事にフェレトは頷きながら、

「あら、ならさっきの相手ですわね。
その男、結構な実力の持ち主のようでしたわね。
深追いした方はもうここにはいませんけど確か“クロス”と名乗っていましたわね」

「そう……ですか。
クロスさんが」

クロスについてはレヴィアにとっても謎の部分が多かった。
勝算あっての深追いだったのか、それとも別の理由か、これ以上の事はわからないままだが、彼女はクロスの無事を願うしかなかった。

「フェレ憎の言う通り、敵はもういねえみてえだな。
これ以上ここに居ても仕方ねえ。
一度どこかに移動しねえか?」

「ちょっと!フェレ憎ってなんですの!?
わたくしには列記とした凛々しき名が……聞いてますの!?」

フェレトの喧騒をよそに、リオナが現場を眺めるなり、提案を出す。
その提案にレヴィアが付け足すように言った。

「それなら、一度寄るべき場所があります。
ついてきてくださいませんか」

「寄るべき場所?」

リオナの問いに、返答を出すレヴィア。
それは、SランクやSSランクの人物、そしてレヴィアのみしか知らない場所である。

「ええ、……ギルドマスターの場所へ、です」





―ギルド総司令本部。

全国のギルドを統括するいわばギルドの本部。
それがブルク城に存在する。

ギルドの総司令官、つまりギルドマスターはサーヴァス・シャイゼンが務めている。
今回その本部へ赴いたのはリオナ、ティニー、リィナ、エレッサ、フェレト、レヴィアの六人である。

「サーヴァス様、彼女達を連れてきました」

「ご苦労だったな、レヴィア」

レヴィアは、スッとリオナ達の後方へ下がった。

「……成る程、大会の方でも見せてもらったが、確かに技量はあるようだな。
本来ならばこの本部はSランクからSSランクの者しか立ち入りは許可していないが、君達はレヴィアに選ばれた特例者。
信頼できる者として歓迎しよう。
私の名はサーヴァス・シャイゼン。
知っている通り……ギルドマスターだ」

粗方紹介したサーヴァスに対し、リオナは腕を組んで、ふぅーんと頷く。

「今回の事件については君達には深く話しておく必要がある。
……まず、知っている通りに、この事件は魔族によって起こされた出来事であるという事。
知能のない魔物に出来る事ではない。
そこのところは君達も理解できる通りだ」

彼の解説している途中でリィナは、一つ質問をする。

「えっと、今回の魔族って、一体どんな相手なんですか?」

その問いに対しては、レヴィアが答えた。

「名はゾランダドス。
ランクはS級です。
私達のような半端者では、例え数があったとしても赤子をひねる以下よりも簡単な事なんです」

彼女の簡単な説明に、サーヴァスは頷きながら、

「残念だけど、その通りだ。
例えSランクの人物がゾランダドスと戦ったとしても、大抵は長期戦になる……勝算は五分かそれ以下。
はっきりいって奴は強い。
強大な斧を持って、その豪腕で全てを薙ぎ倒し、破壊し尽くす。
何人ものSランクが挑んだが、その圧倒的な強さの前に倒れてしまったよ」

ゾルの物々しいまでの強さをリオナ達は聞いているうちに、一つの疑問が浮かび上がってきた。

「じゃあ、なんで俺達はここにいるんだ?
そんなに強い奴なのに、俺達Bランクが出た所で粉々にされるのは目に見えてるんじゃねえのか?」

今まで黙っていたリオナがそう言うと、それに対してもレヴィアが対応した。

「そうです。
私達Bランクがいくら束になったところで勝ち目はゼロです。
それよりも、私達Bランクは別の事をします」

「別の事?」

素っ頓狂な声をあげるようにリオナが言い返す。
レヴィアは自分を含め、六枚分の何かが書いてある紙を取り出し、リオナ達へと配った。

「……その紙を見てもらえばわかりますが、私達の仕事はこの世界にあると言われる一つの“秘宝”を手に入れる事。
探索の終了していない遺跡などもこの世界に数多くあります。
遺跡にはその秘宝に繋がる手がかりが書いてあるそうで、それらを手がかりに秘宝、名は“紅き炎”と言われている物を入手します」

淡々とレヴィアが説明した所でリオナが止めにかかった。

「ちょ、ちょっとまて、遺跡が数多くあるって言ったけどよ、それ全部調査すんのか?俺達が?
あんまりそういう考古学みたいなのは得意じゃないんだけどな……」

成る程といった顔で、レヴィアはリオナに返答をする。

「大丈夫ですよ。
私達の仕事は研究ではありません。
G-Aらしく、入手するという方法です。
調べる事などは研究者にまかせておけばいいですから」

そう言うと、リオナは安心した顔で、胸を撫で下ろした。

「……そういうわけだ。
君達にはその秘宝の入手に携わって頂きたいわけなのだが、勿論、強制はしない。
拘束もしない。
研究結果が出るその日まで通常のG-Aとして生活してもらって構わない。
……どうかな?」

サーヴァスがそう回答を求めるも、リオナの答えは一つだった。
面白そうな事なら、すぐにでも首を突っ込みたがるリオナの考える事は、レヴィア達にも理解できた。

「やるに決まってんだろ?
人助けの仕事もいいけど、そういう仕事もやってみたいと思ってたところなんだよな。
勿論、危険は付き物って事は承知だ。
頼みとあれば、やってやるぜ」

彼女が承諾の言葉を述べると、ティニーも続いて、

「お姉ちゃんがやるのなら、僕もやるよ。
それに……」

(お姉ちゃんのお父さんに頼まれたし……何かあったらお姉ちゃんを守れって)

「それに……どうしたんだ?」

承諾の後の独り言に突っ込むリオナの言葉に、ティニーはあたふたしながら、

「な、なんでもないよっ!
それより、リ、リィナさんたちもどうするの?」

必死に話を切り替えるティニー。

「うん、私もやるよ。
ティニー君とリオナちゃんをほっとく事なんて、できるわけないじゃな~い!これでも、リオナちゃん率いるRedHeartsの一人なんだからね」

リィナも追いかけるように受諾の言葉を述べた。

「ね、エレはどうする?」

エレへリィナは聞いてみると、

「……やる」

小言を喋るように小さな声で、かつ短文を述べるかのようにエレも請け負った。

「全く、皆子供ですわね。
はしゃぐのはよしてくださいな。
知ってのとおり、危険が付きまとう仕事なんですのよ?
ピクニック気分で仕事を請けるなんて、生半可過ぎますわよ」

厳しい一言でフェレトがそういうと、リオナは切り返すように、

「なんだフェレ憎、ぐだぐだ言ってばっかりじゃ将来ハゲるぞ?
やるのかやらないかを言えばいいじゃねえかよ」

フェレトをおちょくると、

「きぃーっ!!
失礼すぎますわ!!
やります!
やりますわよ!!」

と、顔を大きくするように怒りを露にしながら、答えた。
サーヴァスは返事を聞き終えた所で、フェレトとリオナのやりとりを断ち切るように、

「全員やってくれるようで良かった。
話の流れがスムーズに進みそうだ。
こちらの方で、何か分かりそうならその時は各地のギルド役員が君達に仕事を紹介するようにしよう。
それで頼む」

その場に居合わせる六人が、全員頷き返事をした。

「それで……この秘宝を入手してどうするんだよ?
効果とかそういうの」

他のメンバーも一番聞きたかった事をリオナが代表して聞くと、サーヴァスは何やら語り始めたのだった。

「“秘宝に選ばれし者、大いなる力を宿し蔓延る悪夢を打ち倒すだろう”
……ある遺跡に置いてあった本に記されていた言葉だ。
言葉の通り、その秘宝に選ばれし者は力を得るらしい。
悪夢は恐らく魔族。
それがどういう物体なのかは詳しくは分かっていない。
そんなところだ」

詳細は詳しく解明できていないようだがサーヴァスの説明に成る程と頷く。

「そうか。それで、詳しい事が分かったら俺達の方にも連絡が行き届くってことか。今よりも強くなっとかないと、何が起こるかわからねえな……」

リオナの不安も可能性はゼロではない故、サーヴァスは彼女の意見に、肯定する。

「そういう事だ。作業は順調に進んでいる筈。詳しい場所が分かり次第、君達にはギルドの役員から知らせるようにしておく。それまでに十分に修行も怠らないようにしておいてくれ、以上だ」

大体の経緯が理解できた所で、話を終えようとしていたその時、扉を開ける男が一人。

その姿はスセリと戦っていた筈のガイそのものであった。

「よぉ……あの野郎共を逃しちまったぜ……」

さすがのガイも、傷を負っている程の相手だったらしい。
それをリオナは、心配そうに見ていた。

「お、親父……大丈夫なのか?」

その言葉にも、ガイは平気そうな声で、

「気にすんな!
こんくらいの傷どーってことねえからよ!
いつものこった!」

笑い顔でリオナの頭をくしゃくしゃと弄った。

(ティニー、リオナの事、頼んだからな)

ティニーの方へこっそりと話しかけ、ティニーに託す。

(は、はい)

曖昧な感じになったがガイは返事を受け取るなり、笑顔で返した。

「それでサーヴァスよ、皇帝が今回来ていてな。
さっきまで戦ってやがったんだが、逃げるゾルを追いかけてそのまま行方を眩ませやがった。
そこんところはジンとネフリータの奴らに尾行させておいた。
俺もお前に一言報告と、可愛い娘を見に来ただけだから終わり次第尾行を開始するけどな」

簡単に報告するなり、サーヴァスは首を縦に振り、

「ああ、頼んだぞ。
あいつらをこのまま放置しておくわけにもいかんからな。
……あいつのためにもならん」

訳有りの口調で語るサーヴァス。
ガイはコクリと頷くなりリオナの頭を撫でた。
そして扉側に向き直り、

「あばよ、お前ら。
無理して死ぬんじゃねーぞ」

そう告げて、そのまま去っていった。





「え、えっと……あれが伝説の剣豪の……ガイって人?」

リィナが驚いた顔のままティニーに聞く。
ティニーが頷いたのを確認すると、

「へ、へぇ……そう、なんだ」

変な声を出しながら納得していたのだった。

(お姉ちゃんとガイさん、会ってたのかな……いつもの感じが出てたけど、ガイさんを見ていた時のお姉ちゃんの顔、確かに元気が無かった気がする。
いつもの底抜けの明るさが何処か抜けてるような……)

リオナの表情を読み取っていたのか、ティニーはそんな事を考え続けていた。

「こんなところだ。
君達には期待しているよ。
町の復興も早急に進めなければならないからな。
……大量の犠牲者が出てしまったからな……」

サーヴァスは辛そうな表情でそう語った。
しかし表情を戻し、すぐに話を切り替える。

「次の町を目指すといい。
ここから西にある町だ。
君達の分の宿を予約しておいてやろう。
クォーもこちらから出しておく。
仕事を請け負ってくれた誠意として受け取ってもらいたい」

そう言うと、リオナは嬉しそうな顔になり、

「本当か!?
ここのところお金が無くて困ってたんだけどラッキーだぜ!」

歓喜の声をあげる。
フェレトは、

「悪いですけど、わたくしはいりませんわよ。
他にやる事もありますので」

サーヴァスの好意を断ったのだった。

「そういうことなら仕方がないな。
引き続いて頑張ってくれ」

彼の言葉に返答するように、

「ごめんあそばせ」

そう言って、フェレトは退出したのだった。

「……それでは、レヴィア以外の君達だけ、宿を取っておくとしよう。
ここから次の町は歩いてすぐなので、そんなに迷う事もないだろう」

「ん?レヴィアはこれから何かあるのか?」

リオナの何気ない質問に、

「ええ、私はこれから調べなければならない事がありますので……唐揚げはまたの機会に」

少々冷ややかだが笑みを帯びた表情でレヴィアは言った。

「まっ、次まででいいぜ。
んじゃあ、俺達はここいらで行くとする。
レヴィア、またどっかで会おうぜ」

笑みを浮かべながらリオナはそう言うと、レヴィアもそれに対し、

「ええ、機会があれば」

そう簡単にだが返したのだった。

(へぇ、この二人、すっかり仲良しって感じするよね、ティニー君、エレ)

うんうんとティニーが頷き、エレが動いてるのかどうかわからない数ミリの変化で首を縦に振った。

「ん?お前らどうしたんだよ?」

リオナが三人の密談に気づいたのか、反応してみたが、

「ん、なんでもなーい!
よね?二人とも!」

「う、うん、なんでもないよ、それより早く次の町に行かないと……日が暮れちゃうよ」

こくこくと頷くだけのエレ。
それもそうか、とリオナも肯定する。

「この町の復興などは私達や職人にまかせておきたまえ。
G-Aには世界の人々の不安を取り除くという仕事がある。
心おきなく行くといい」

サーヴァスの見送りの言葉を胸に、

「よっしゃ、そうと決まれば行こうぜ!!」

リオナ達は新たなる使命、来たるべき紅き炎を手に入れるその日を目指し、四人は新たな気持ちで前へと歩き出すのだった。

【第5章 -武術大会後編- 終】

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RHは現在もガンガン進行中!(?)長期休載とかなるべくしないように頑張るぜ!!

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