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Red Hearts 27話

第27話『気合、入りましたか?』

九年前、自分に起こった出来事を思い出すまで、今の今まで父や母の存在を追いかけ続けたリオナ。

事実を思い出した今、もはや叶わぬ夢。
今まで培ってきた獅子の如き精神はボロボロと崩れ落ちた瞬間だった。
全身から力が抜けてしまい、もはやどうすればいいのかもわからない状態へと陥ってしまっていた。

ここで、陰から覗き見していたレヴィアが、そっとガイの前に姿を現す。

「ガイさん……」

ガイは最初から彼女が覗き見ている事は知っていた。

「よお、レヴィア。
恥ずかしい所、見せちまったな……」

「そんなことありません……覗き見ていた事、お詫びします」

スッ、と彼女は頭をガイへと下げる。

と、その瞬間、二人はどこからか一筋の殺意を感じた。

「ちっ!!」

力を失くしたリオナを抱え、ガイとレヴィアは後方へと回避した。
先ほどまでいた場所は地面が大きく抉れていた。

「うふふ……そんな所でぼーっとしてたら、お姉さんが吹き飛ばしちゃうわよぉ?くすくす」

一人現れた長い鞭を持った魔族。

「ちっ、めんどくせえのが現れやがったか……闇鬼“スセリ”」

レヴィアにもそのスセリという魔族の名はどこかで聞いた事があった。

「無数に見える鞭の動きは全てを駆逐するという……ランクS級のあのスセリですね?」

さすがのレヴィアにもスセリの威圧感には圧倒されていた。
彼女からは冷汗が止まらない。

「おい、レヴィア、リオナを頼んだ」

スッと立ち上がり、ガイはレヴィアへと指示をだす。

「……わかりました。
この場は、おまかせします」

Sランクの戦いに、Bランクが入るとなれば邪魔になるだけ。
その事を十分承知していたレヴィアは指示通り、力の無いリオナを背負い、颯爽と走り去った。





「……ほぉ?お前が追っかけないなんて、珍しい事もあるんだな。
残酷非道と呼ばれたあのスセリがすっかり丸くなったもんだな?あァ?」

ガイの言葉にスセリは笑む。

「くす、別に。
最初っから死んでるような木偶人形とメガネかけた雑魚には用なんかないわよぉ。
それに、女の子いじめるより男を叩く方がゾクゾクするじゃなぁい?」

ガイはペッと唾を吐き捨て、刀を抜き、肩に置く。

「そうかい、そいつぁ……くそったれな趣味だなッ!!」

一気に跳躍し、スセリへと詰め寄るガイ。

無事彼は心が深く傷ついたリオナのもとへ、帰る事はできるのだろうか。
両雄の激しいぶつかり合いが始まったのだった―。





皇帝やゾル、ガイとスセリからかなり離れた所で、レヴィアは足を止め、リオナをゆっくりとその場へ降ろす。

「リオナさん、これ以上先は自分で歩いてください。
ティニー君達がこの先にいますから」

レヴィアが気を利かせたのか、彼女へ言った。

「あ、ああ……ありがとよ、レヴィア」

いつもの覇気が全く感じられないリオナをじっと見つめるレヴィア。

「……リオナさん、あなたの事情にはわからないでもないです。
ましてはあなたとの会った回数は指で数えた方が早い程。
ですが、あなたはそれでも持ち前の精神論で今までも乗り越えてきたはずです。
厳しい言い方をするようですが、“いつものあなた”らしくない……」

リオナにもそんなことは分かっていた。
いざとなれば持ち前の気合などでどうにかなる、そう思っていたのだがショックが大きすぎたのか、立ち上がる力はあるものの、戦う気力が全く入らない。

「……それも……そうだよな、こんなの、俺らしくないよな……俺らしく……」

ゆっくりとだが、リオナは立ち上がる。
それでも顔にはいつもの表情はない。
笑顔が苦笑に見えてしまうほどだった。

「……リオナさん、ちょっとすみません」

レヴィアの突如の言葉に、リオナは疑問を覚えた。

ツカツカとリオナの元へ歩みよる。
そして……。

パシンッ!!

あっけにとられていたリオナに平手打ちの音が鳴り響いた。
彼女の頬にはレヴィアの平手のあとがくっきりついていた。

「い……いってぇなこの野郎!!何しやがんだ!!」

彼女の怒りの反撃の言葉に、レヴィアはついに微笑む。

「気合、入りましたか?
あなたにはそれぐらいの馬鹿っぽさがないと駄目なんですよ?
……それでこそ私のライバルです」

どうやらレヴィアの荒療治だったようだ。

リオナにも、さっきまでの苦痛や絶望が嘘のように和らぎ、いつの間にか笑みが戻っていた。

「お前……けっ、後で飯奢れよ?
結構痛かったんだからな……唐揚げ定食でヨロシク」

頬をさすりながらレヴィアへと強請(ねだ)った。

「……仕方ないですね、とりあえずはティニー君達はすぐそこにいます。
奢りの話は、とりあえずここの一件が終わってからです。
行きましょう」

レヴィアはすぐさま走りだす。

その後ろを、リオナがついて行く。

気の合わない二人の間に、何かのピースがはめ込まれたかのように、お互いが少し近づいた、そんな瞬間だった―。





一方そのころ。

「ティニー君!後ろ頼むわ!」

「うんっ!せやぁぁぁ!!」

「……」

ティニー、エレ、リィナは、迫り来る群集を前に応戦していた。
他にも、弓で戦う者、突破する者、魔道中心と、先程まで大会に出場していた戦士達とともに上手く立ち回りつつ、敵兵の数を減らしていく。
そして遂に残りの一匹となったところで、

「これで……最後っ!!」

ザンッ!!

縦一閃に斬られた魔物は断末魔をあげる暇もなくそのまま息絶えた。
ようやく敵を駆逐し終わり、ため息をついたり、座り込む者も出始めた。

「ふぅ……ようやくここは終わったわね」

リィナは剣を鞘に仕舞いながら言った。
エレも冷たい瞳のままだが、何も言わず同じく双小剣を納めた。
しかし、ティニーはどこか上の空である。

「……ティニー君、もしかして、リオナちゃんのこと?」

何となく察したリィナがそう言うと、ティニーはその言葉に頷いた。

「う、うん。
大丈夫かな……って思って」

彼の一言に、リィナは微笑む。

「大丈夫よ。
王国の医者がついてるもの。
リオナちゃんの元気なら、もう既に起きてる頃合じゃない?」

しかし、ティニーはそういうことじゃないといった感じに、首を横に振った。

「ううん、それ以上の胸騒ぎがあったから……気のせいだといいんだけど」

少しだけ俯むくティニーに、エレが肩を叩く。

「……噂をすれば」

何かを見つけたのか、その方向をエレは、ぴっと指をさす。
その方向へティニーとリィナが目を向けると、奥からはレヴィアと、そしてリオナが走ってきていた。
その二人の到着とともに、ティニー達は二人のもとへ近寄る。

「レヴィアさん!それにお姉ちゃん!もう大丈夫なの?」

ティニーの心配にも、リオナは胸を張りながら、

「なぁに、なんてこたあねえさ。
心配かけちまったみてえだな」

その談話をよそに、レヴィアは辺りを見渡す。

(……確かに敵の殲滅は終わったようですが……肝心なあと一人……現れないという事はこことは違う場所へ……?)

「リオナさん、私は残党がいるかどうか調査してきますから、あなたたちはここで待機していてください……それでは」

「お、おい!」

その言葉をリオナに残して、レヴィアはその場を立ち去ろうとしたが、その時だった。

一つの野太い男の声がした。

「……待つでござる、レヴィア殿」

彼女の目の前に現れたのは熊のような巨漢だった。背中には大きな大剣を背負っている。

そしてその隣にも女の姿があったのだった。
無武装だが、長い髪をした美しい女性。

二人の男と女が、レヴィアの前に立っていたのだった。

「クス、久しぶりね……レヴィア」

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